リサイクル業者は、米ひばを嫌う 
今資源のリサイクルは、社会的に最も重要な課題の一つ。当社にとっても同じです。木材を製材し、あるいは加工する際、必ず木くずが発生するからです。この木くずをどう処分したらいいか、頭が痛い問題です。再利用すればいい?ところがそう簡単にいかないのです。利用価値のある用途が見つかっても、それを作るために高い費用がかかるなら意味ありません。それなら引き取り料を払って、リサイクル業者に処分をお願いしたほうがマシ、ということになります。事実、多くの同業他社は、そうしています。当社もそうしています。
ここで問題は、リサイクル業者にとって、同じ木くずでも良いものと、そうでないものがあることです。一口に木くずといっても、樹皮、のこくず、それに切れ端材など、種類はいろいろ。まず大切なのは、それらの木くずを種類別に分けてあるかどうか。きちんと分けてあれば、よい材料。混ぜこぜは、嫌われます。さらに大事なのは、早く腐るかどうか。早く腐るなら○。遅いのなら×です。どうしてかというと、多くのリサイクル業者は木くずを腐らせて、有機肥料をつくるからです。引き取り条件は、これらを総合して業者にとって使いやすいかどうかによって、決まってきます。そこで木材リサイクル業者が、当工場の木くずをどう評価するか、当社にとって大きな関心事になります。で、その評価は?最低ランクなのです。

 
  最低ランクになる理由hibazentai
ただの古ぼけた木の柱、これがどうしたと思われるでしょう。この柱は、建ててから20年以上経過しています。当地桜井は、例えば関東地方に比べて気温は、平均して23度高め、雨多くシロアリはうようよいます。なぜ、20年以上というと、一つの目安があります。当社事務所は、1985年に当地に建築されました。それまでここは、原木置き場として使われていました。この米ヒバの丸太柱は、隣地に原木が崩れ出さないように立てたもの。 事務所を建てる以前から使っていたのですから、20年以上経っていることは確実です。既に用済なのですがあって邪魔になることもないのでそのまま残っているものです(ただし当社が現在の新事務所に移転する前の平成16年春の時点での話です。現在は取り壊したため残っていません)。木は屋外にさらされた場合、それも当地のような気候条件の下なら即、シロアリと腐朽菌の餌食になってしまいます。だから腐っていてあたりまえ。きっとこの柱も形だけ立っているだけ、中は腐っていると思われるでしょう。シロアリが食った痕もあります。根元の傷み、かなり進んでいます。表面をシロアリが食った痕。わかりますか?

一皮むいてみました。まあ!なんと鮮やかな黄金色でしょう。この柱、まだ生きているようです。しぶといですね。これではリサイクル業者が、最低ランクをつけるのも無理ありません。よくみると丸太の外側、辺材(白太といわれる部分)は、腐っています。ところが心材(赤味といわれる内側の部分)の木材組織は、生きています。たしかにどの樹種でも辺材は腐りやすく心材は耐久性があります。しかし米ヒバの心材の耐久性は際立っています。桧と同等またはそれ以上の耐久性があります。もう一つ注意しなければならないのは辺材と心材との比率。辺材が厚い(辺材の比率が高い)木は辺材の薄い木に比べて耐久性はありません。一般に高樹齢木であればあるほど辺材の比率は小さくなります。米ヒバは成長が遅く同じ太さの丸太でも他の樹種に比べて高樹齢であるので辺材は非常に薄いのが特徴です。下の写真をご覧ください。左が米ひば、右が内地杉です。米ひばの直径は32センチ、内地杉は大小ありますが平均25〜30センチです。米ひばは心材が黄色なので白っぽい辺材との境界がわかりにくいですが辺材の厚みは平均1センチくらいです。一方内地杉の辺材は白、心材は赤褐色で境界ははっきりしています。辺材の厚みが直径の半分ほどのものが多いことがわかります。
   

 シロアリや腐朽菌も米ヒバを嫌う
どうして米ひばの心材はこんなにもシブトイのか?むずかしい理屈はどうでもいいですね。はっきりしているのは、シロアリや腐朽菌は、米ヒバを嫌うということです。彼らは、この木に含まれるある天然成分を嫌います。だからかじりはしますが、食い尽くすところまでなかなかいきません。ところで普通の木ならどうなるでしょう。シロアリや腐朽菌は、どこにいるのかわかりません。しかし大好きな条件が与えられれば大繁殖をはじめます。その条件とは湿気、暖かな温度、おいしい木。といってもあまりえり好みしません。たいていの木はOKその結果、右の写真のようになります。写真は、当社のもう一つの出入口の門柱です(これも移転の際に撤去したため現在ありません)。シロアリに食われて、中が空洞になってしまい外側だけぬけ殻のように残っています。ちなみにこの門柱の樹種は、主として住宅の梁、桁用に最も一般的に使われている米松です。

 当社が扱う米ヒバは、すべて原生木。
米ヒバと他樹種の見分け方。大きな違いは木目です。木目とは年輪の間隔。
写真は、特殊用途の鉄道枕木用に製材された米ヒバ製品です。木目の違い、わかりますか?この写真ではちょっと無理かも。当社が製材する米ヒバは、すべて原生木。だから木目の粗い木はありません。一方、他の多くは、二次林木や植林木。樹齢が若く、成長が早い分だけ木目は粗くなります。一般に木材の取引では年輪間隔が平均2mmなら、「木目緻密」でとおります。米ヒバの年輪間隔は平均1mm以下です。米ひばの木目はとても細かいです
 

 雨ざらしにされた木は、必ず腐る。
屋外で雨ざらしの環境で、腐らない木はありません。木は自然からの賜りもの。ですから当然です。もし腐らなければ、逆に自然の循環を乱すことになるでしょう。用がすめば腐って土に還る。あるいは燃えて二酸化炭素と灰になり自然に帰る。それが木の良さでしょう。違いは腐る速度が、早いか遅いかの差。何種類もの木を屋外に並べ、樹種ごとの腐りの進行を観察したとしましょう。早い木は23年で腐るでしょう。条件によって、もっと早いかも知れません。普通の木なら5年から10年位でしょうか。何年たったら全部腐ってダメになるのか、条件次第で一概にいえません。しかし米ヒバが、最後に腐る木のグループに入っていることは間違いありません。このグループの顔ぶれは、青森ヒバや米ヒバ、檜等。ただし檜は樹齢の高いものに限ります。普通の木は、薬剤で防腐・防蟻処理しても米ヒバより先に腐るでしょう。薬剤による防腐効果は、数年しか続きませんから。化学薬剤は天然成分にかなわないのです。一度木材に浸透した薬剤は、ゆっくり蒸発してゆきます。薬剤の蒸発が進めば、腐朽菌やシロアリが好む木に戻ってしまうのです。10年を越す効能保証をするメーカーは今のところありません。
論より証拠。
下は当社社員宅(京都府南部)に設置した米ヒバ製デッキを令和5年1月に撮影した写真です。
工事したのは平成16年の夏、完全に露天にさらされて18年以上経過しています。
黒カビが目立って相当古びた感じになっていましたが、昨年末(令和4年)の大掃除のときに水をかけて床掃除用のブラシでごしごしこすっただけで黒カビはきれいに落ちました。
そして写真のように米ヒバの木肌が戻ってきました。
奥行方向にとびとびに白く変色した痕が並んでしるのはそこが庇からの雨水が落ちる定点のためです。手前から一枚目の床板の左側にとびとびについている色の濃い部分は腐れのためです。奥側の床板にもところどころ見られます。この腐れは白い変色痕の列の左側(庇の外側)でのみ発生していることがわかります。またこの腐れの進行は他の木材に比べて極めて遅いです。この腐れの進行具合だとその上を歩いてブカブカするまで、つまり使用不能状態になるまでまだ10年以上かかることは確実と思われます。
実際の作業の模様はこちらでご覧いただけます。

 米ヒバは目先ハイコスト、長期ではローコスト。
さて、あなたが家を建てるとしましょう。そのとき住宅の土台に薬剤処理した木を使ったとします。薬剤は床下からゆっくり時間をかけて蒸発していきます。その上で生活をしているならどうなるでしょう。防腐剤とシロアリ駆除剤の混じった薬を吸い込む可能性があります。新築から10年経ち、ようやく薬の蒸発がおさまった頃、シロアリ駆除業者が、あなたの家の床下を点検しました。そして薬の効き目が切れたので、もう一度薬を塗りましょうといいます。あなたならどうします。また有害物質を吸い込むリスクをおかしますか?費用もバカにできません。米ヒバの値段は、薬剤処理木材の2倍〜3倍。だから米ヒバを使えば、初期費用は、確かに高くつきます。でも10年後、費用は逆転するかもしれません。米ヒバとは、最後に腐る木。こだわりをもって家を建てる方にお選びいただいている木です。


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